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第1日目
俺は、急いで帰っていた。
ついさっき、あいつにひどいことを言ってしまったから。
謝りに行こうと急いでいた。
自転車に乗り、
「俺は、あいつに救われていたんだ」
そう呟いていた。
あいつというのは、俺の幼なじみの紘子。
俺が役者の道を目指しているのをいつもそばで見守ってくれていた。
本当は、すごく感謝しているはずなのに、素直になれずにいた。
「なんで、勝手なことしたんだよ!」
気がついたら、そう叫んでた。
「ごめんなさい・・・・・わたし・・・・」
他のメンバーが、小屋に集まってきていた。
「どうした、涼。声、外まで聞こえていたぞ?」
「わたし・・・・」
紘子は、それだけ言うと、飛び出していってしまった。
「また、喧嘩したのか?」
「素直じゃないねー、好きなくせに」
「うるさいよ」
「でも、ちょっといままでの喧嘩と違うな。なんか、あったのか?」
「なんにもないよ」
「そうだ。今度、芝居をさせてもらえることになったのは知ってるだろ?」
「それは、知ってるよ」
「なんだ知ってんじゃん。その芝居のチケットのことだけど・・・・」
「あいつ、勝手に・・・・」
「紘子さん、すごく頑張って売ってくれたんだって。」
「売ってくれた?」
「断り続けていた人たちをどうやって説得したかは、知らないけどさ。」
「俺のおかんも、二枚買ってくれたみたい。」
「紘子が、全部・・・」
「そうだよ。紘子さんのお陰だぞ?芝居できるのも、チケットが全部売れたのも・・・・」
「・・・・・・・・」
「涼?」
俺は、いたたまれなくなって、小屋を飛び出した!
「涼、どこへいくんだよ!」
「おれ、弘子に謝らなきゃ」
「・・・・」
「・・・あいつにひどいこと言ったんだ。だって、あいつ」
「謝ってこい!謝りついでに、愛の告白してこいよ!」
「・・・・自転車借りるな」
「気を付けろよ!」
「・・・・うん!」
それが、彼と交わした最後の会話になるなんて、俺はそのとき思ってもいなかった。
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