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自分から見ても、兄は自慢の存在と言えた。力強い顎と腱を持ち、雛にしては体が大きい。翼が3匹の中で最も長かった。彼が巣の中で飛び立つ練習をすると、抜け落ちた毛が洞窟中を舞った。
兄は行動ひとつをとっても、猛禽の鳥の模範生だった。ときおり、巣の端のギリギリに立ち、そこかしこを飛ぶ野鳥――将来の糧――を目で追っていた。すでに頭の中では狩りの構図を組み立てていたのだろう。兄は本能的で、両親が許せば、今にも岩を蹴って飛び立ち、狩りに行ってしまうのではないかと思われた。それぐらい、彼はハヤブサとして生きることに、熱心だった。
自分の姉は冷静な鳥だった。彼女も兄よりは小柄だが、すでに充分に発達した脚と羽を持っていた。彼女は他のどの鳥たちよりも、狡猾だった。崖から海を見ている時は、兄と異なり、飛翔する大人たちの様子を眺めていた。
彼女がときおり喋っている内容は、そもそも兄とは異なった。海から吹き上げる風の種類だとか、逃げ惑う鳥たちの行動パターン、そして餌を横取りする狡猾な山ガラスの退け方など、誰もが生きながら覚えることを、雛にしてすでに悟っていたようだった。
この2匹は「台座」に立つ前に既に、大人になる準備を終えているように思えた。
じゃあ自分はどうかといえば、全くの劣等生でしかない。
餌の量のせいか、そもそも生まれながらにして劣っていたのかは、わからない。
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