2. 台座

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自分と姉が見守るなか、2度、3度と両足で跳ねて、巣穴の出口までたどり着くと、彼は側面の岩肌に足をかけた。その力強い嘴で岩を噛み、首の力だけで、体をぐいと持ち上げる。兄は生まれ持つ道具を使い、危なげなく垂直の崖を登り始めた。 兄が目指す台座は、我々の巣を斜めに数メートル登った所にある、せり出した岩の上の事を指していた。 その場所は我々が生まれた時から、すでにそこにあった。不自然なぐらい薄く平らな一枚岩が崖に突き刺さり、飛び出していた。その岩の表面は、世界を映す鏡のように輝いていた。不思議なことに、長年風雨にさらされているはずなのに、その輝きが時に侵食された様子は微塵もなかった。 自然のどんな意志が作り出したのかわからないその場所を、ユキハヤブサたちは、彼らの儀式の舞台に選んでいた。 兄はまもなく、台座が突き刺さる根本の部分までたどり着いた。 さらに最後の蹴り上げで、彼は完全に自らの体を台座の上に引き上げた。 兄は疲れた様子もなく、堂々と胸を張り、これから起こる何かを待ち受けていた。 巣から覗いていた自分や姉は気づかなかった何かを、感じ取ったらしい。兄の首がくるっと横に回った。 そこに、年老いたハヤブサの老鳥が止まっていた。台座の少し上、岩と岩の間から生えている低木の枝の上だった。 いつから? という質問に答えられる者はいない。なぜなら、誰も彼の飛来を見ていなからだ。     
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