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そんな危ない道を苦労して進んでも、最後は単に崖の上で行き止まりになるだけである。道中に案内板など、もちろん無い。観光客なら途方にくれるだろう。
つまりここを歩く者は滅多におらず、前回も今も、途中で出会う旅人はいなかった。
少し息が落ち着いてきた。よくよく確認すれば、道の先の方に目指す教授のいる、迷彩模様のテントの先端部分が、ちゃんと見えていた。
なんだ、と思った。あと2分休んだら再出発しようと、自分に言い聞かせた。
荷物を下ろし、感覚の戻ってきた肩をさする。そうしながら、彼女は水平線の彼方を見つめ、ぼうっと考え始めた。意識が内面に沈んできて、自分のポニーテールが風ではためいている音が、聞こえなくなってくる。
ここ2週間で数度この場所に来ているが、いくら見ても美しい場所だった。
けれど、この場所に生きる動物にとっては、どうだろう。いくら空や海が青くても、たとえ空気が澄んでいても、きっとここは厳しい世界に違いない。
適応できた、もしくは適応せざるを得なかった者たちだけが、この場所で暮らすことを許されているのだろう。
考え込む彼女の意識に再び、上空からの鳴き声が割り込んでくる。先程よりも少し低い空に、真っ白な姿が見えた。
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