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ハヤブサだ。同じ属の猛禽の中で、いま見ているこの鳥は、大きい部類に入る。頭から広げた羽の先まで、羽毛に包まれた部分は、とにかく白かった。
もし曇っていたら、空に同化して姿が捕らえられなかったかもしれない。しかし今日の晴れわたった青空を背景にして、1羽の姿はくっきりと浮かび上がっていた。
人の気配に気づいたのか、獲物を探しているのか。理由はわからないが、鳥の顔が動いて、彼女の立っている地表の方を向いた。
種類はわかっていたけれど、あらためて顔が正面から見え、彼女はそのハヤブサの最大の特徴を見てとった。
鳴き声の主。名前は『ユキハヤブサ』。
その鳥こそが、彼女をこの地に連れ出し、崖の道を歩かせている理由だった。
――
道の終わりの場所は、意外にも広く、車2台が停車できそうな、円形の更地になっていた。鉄の棒とロープで出来た柵がそこで終わり、もう先に道が無いことを示していた。
広場の真ん中を陣取って、クレセント型のドームテントが設営されていた。テントの外側の布地は、目立たないよう岩肌と砂に似た色に塗られている。テントの天蓋と側面に、まだ葉が付いている木の枝がまばらに、くくり付けれられていた。間に合わせのカモフラージュだろうか。
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