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ただこの「目」には不思議があった。
模様はオスにもメスにもある。けれど生まれたばかりの雛鳥たちを観察しても、それは刻まれていなかった。
成鳥となって飛び立つまでのどこかの段階で、突然この模様が現れるのだと、地元の人間は言う。その興味深い特性は、世界の鳥類学者の興味を惹きつけていた。
そのひとりが東西大学・理学研究科の黒木教授であり、平子は彼の助手として、フィールドワークの手伝いをしていた。
黒木教授の「変人」ぶりには手を焼いている。けれど学者の端くれとして、この鳥を研究する熱意は、平子の胸にも宿っていた。
「ほんと美しい鳥ですよね。この優美さ、そして力強さ。この場所では敵もいないし、ピラミッドの頂点にいる存在でしょう? そりゃあ、飛び心地は最高でしょうね」
平子は次々と入れ替わる画像に魅入られながら、呟いた。
「そうだろうか?」
教授は急に真面目になり、顎に手を添えた。
「あの鳥の美しさは、我々の感じるものだ。飛んでいる彼らの本当の気持ちなんて、わからないよ。それにね、なぜか僕にはあの子たちが、とても辛そうに見えるんだ」
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