1. ハヤブサ

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平子は、はっとして教授を見た。たまにこの人はそんな悟った顔をする。その特異な視点で、私にはわからない何かに気づいているかのように。 最後にカメラのモニタは、ハヤブサの巣を映し出した。巣は岩棚にぽっかりと空いた穴を利用していた。その中に白っぽい生き物が映っていた。ここ1週間以上ずっと、教授と私の体と心を捕らえているむくむくとした存在。もうすぐ巣立ちを迎える、ユキハヤブサの3匹の雛鳥たちだった。 「さあ、注意して観察を続けよう。いちばん最初に生まれた子の巣立ちは、まもなくだ」
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