3. 失敗

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3. 失敗

「きっと、何か原因がある。事前に口にした食べ物とか、あの場所に流れる風とか、あの奇妙な老鳥の言葉とか…」 姉がぶつぶつと呟くように、独り言を言う。 我々が兄を失ってから、3日が経っていた。兄の喪失は巣の中で誰よりも、姉を神経質にさせていた。 家族は口にしないが、姉があの台座にあがる日がもうそこに迫っているのは、誰もが感じていた。 決して他人事ではない。自分だってすぐに同じ舞台に立つ日が来る。そう理解しているのに、ここ数日の自分の意識は、姉の行動や言動に向かっていた。 その日、姉は前に立ちふさがり、命令した。 「お前、私が飛ぶ時に一緒に登れ。台座に立つ私の背後にいて、巣立ちの儀式を見ているんだ。そして何か怪しい変化があれば、すぐに私に合図しろ」 冷静で知的で、そして傲慢な姉らしい言い方だった。けれど自分は躊躇した。すぐに同意できない理由があったからだ。 「ふん、意気地なしめ。そんなに掟が怖いか。『試練へ挑む時、台座へ登る者はひとり』。呪縛に惑わされおって」 姉の嘲笑はどんな海風よりも冷たく染み込んだ。     
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