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相槌を打ったウィリアムが、執務机の上のベルを鳴らした。顔を見せた青年にお茶の用意を言いつける。ドアが閉まると、すぐに口を開いた。
「逆にショーンとエイデンを城に残すのは?」
予想外の案に、ラユダとショーンが顔を見合わせる。最愛の少年王の警護を他者に任せるような男ではない。ならば……まさか?
執務室に穏やかな風が吹き込む。窓を開け放しているため、庭からの風にカーテンが揺れていた。
「陛下を…連れ出す気か?」
「エイデンも似たような戦略を好むけど、裏をかく。王は城にいるべき、なんてルールはないだろ? 簡単な話で、城は後で取り返せるからな」
簡単そうに言うが、戦は城が落ちれば終わりとされている。渡して取り戻すなんて方法は邪道であり、ましてや城は王族や国の象徴だった。チェスやボードゲームのようにいかない。
「……策としてはあるが、国王として許可できないだろう」
エリヤも似たような策を考える可能性は高い。優秀であるが故に、最終的な結論にさほど違いはなかった。だが、国王という立場が邪魔をする。
国の象徴である城に国王が不在となり、城が敵の手に落ちたなら、国民は国が滅びたと考えるのだ。国民の側にすれば、国王が守るべき民や国を捨てて逃げたように見える。そのしこりは簡単にほぐれないだろう。遺恨となって残れば、今後の国のあり方を左右する。
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