5-11.責務とは身を縛る鎖に似て

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5-11.責務とは身を縛る鎖に似て

 開いた扉の先に見慣れた騎士の黒いローブを見つけ、エリヤは口元に笑みを浮かべた。ゆったりと立ち上がり玉座の前に敷かれた赤い絨毯を踏む。階段に足をかけたとき、ウィリアムの背後に影が見えた。 「ウィルッ!」  咄嗟に叫んだエリヤの右手が伸ばされる。その姿に目を奪われたウィリアムの反応は、僅かに遅れた。振り返ろうとした背を、近衛兵が切りつける。 「ウィリアム?! 陛下、動かないで!」  エリヤを守るために飛び出したエイデンが、己の身体で王の姿を隠す。階段を駆け下りたエリヤを左手で抱きこみながら、己の剣を扉の方へ構えた。なんとか抜け出そうと足掻くエリヤは、頭の上の王冠をなぐり捨ててエイデンの脇をすり抜けようとする。 「陛下っ! まだです」  叫んで強引に押し留めた。エイデンにも愛する存在はいる。ドロシアが同じ目に合ったら、きっと自分を留めようとする相手の腕を切り落としても駆けつけるだろう。その場で一緒に息絶える状況になろうと後悔しない。     
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