5-11.責務とは身を縛る鎖に似て

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 だが、それはエリヤに適用されてはならないのだ。彼は国の要であり、絶対に倒れてはいけない柱だった。国王であるエリヤを守るために多くの兵は命を散らし、盾となって戦う。一人の人間である前に、彼は国王という象徴だった。 「っ、わかって、いる」  分かっていても動きたい。ここで悠然と構えているのが国王の務めであり、ウィリアムがそう望むことも知っていた。涙が零れるが拭うこともせず、エリヤは足元の王冠へ手を伸ばす。その右手は震えており、3度目にしてようやく王冠を拾い上げた。  顔を上げて、ぼやけた視界を厭うように目を見開き、そこで初めて……自分が泣いていると気付く。咄嗟に袖で拭った。     
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