5-12.宮廷医師の手荒い治療

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5-12.宮廷医師の手荒い治療

 赤い血があふれ出して床を濡らす。エイデンと一緒に駆けつけた先で、ウィリアムが扉に寄りかかるのが見えた。ずるずると背を擦る形で滑り落ち、座った彼の首ががくりと前に倒れる。 「ウィル!」  叫んだ声は吸い込んだ悲鳴と相殺されて、ほとんど音にならなかった。喉に張り付いた音が残っているようで、気持ちが悪い。もつれる足で必死に近づくと、兵の声が聞こえた。 「抜きます」  アレキシス侯爵家嫡男エイデンが強い響きで否定した。今抜いたら、筋肉で押さえている出血が酷くなる。下手すれば失血死してしまう。 「ダメだ! 手を離せ」  命じる響きに、兵が一礼して下がる。親が健在なうちは好きにすると言い放っていたたエイデンは、宮廷医師として働いていた。その腕は一級品で、エリヤも体調を崩した際に治療を頼んだことがある。  少年王を庇いながらウィリアムに歩み寄ったエイデンは、抜き身の剣を床の上に置いた。鞘に仕舞わないのは、まだ戦時中だからだろう。すぐ手が届く位置に置き、自らの膝で重石をかけて押さえる。 「陛下はこちらへ」     
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