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「損失はありませんが、1名が離脱です」
使徒の数と同じ12名で構成される親衛隊の騎士は、家柄ではなく実力で選ばれた有能な者ばかりだ。1対多数の戦い方を叩き込まれた彼らは、一騎当千の働きをみせていた。そんな彼らをもってして食い止められない兵力を送り込んだ敵に、エリヤは眉を顰める。
今度はどこの貴族が手引きしたのか。
常に周囲は敵だらけだ。国内の貴族だとて安心して身を預けられない現状、どの貴族が裏切っていたとしても大した驚きはなかった。
「ウィル、今度は誰だ? レモンの原因がいるのだろう」
「……勘がいいな、エリヤ」
普段はストレートでミルクや砂糖を一切入れずに紅茶を飲む執政が、突然好みを変えたと聞いた。それも執務室で飲む場合に限られている。エリヤの部屋で共に飲む紅茶に、レモンは添えられなかった。城内の噂話や報告を繋ぎ合わせれば、すぐ答えに到達できる。
開かれた扉の外から響く剣戟の音を聞きながら、エリヤは玉座に座ったまま隣の男を見上げる。すぐに気付いてウィリアムは膝をついた。視線の高さを合わせるために屈む動きに激痛が走った。
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