5-4.毒の味はレモンの香り

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5-4.毒の味はレモンの香り

 チェンリー公爵ショーンに持ち込まれた忠告は、ウィリアムが独自のルートで掴んだ情報と一致した。  ゼロシアは統合されたばかりの領土で、自治領だ。放置すれば離反するし、手を出せば本城が危険に晒される。面倒な状況に手が止まった。  テーブルの上に広げられた地図に、チェスの駒に似たピンが置かれていく。敵の動きを確認して戦略を練る際に良く使われる道具だった。ピンを動かせば、本城が丸裸になる。 「ショーンならどうする?」 「そうだな、一度は貴様を動かして敵を誘導し、すぐに引き返す。代理をアスターリア伯爵とエイデンか、俺に任せて本城を守る」 「うーん、ほとんど同じ案か。ラユダは?」  ショーンと一緒に顔を見せた顔馴染みに、ウィリアムは平然と話を振った。国家の存亡を占う重要な戦略会議を執務机の上で始めたと思えば、外部の声も取り入れる。神官見習いから成り上がったウィリアムにとって、肩書きは用を成さない。優秀ならば、外部の声も積極的に活用すべきだと考えていた。 「基本は同じだが、アスターリア伯爵の戦力では厳しい。アレキシス侯爵とショーンで応戦した方が確実だろう」 「なるほど」     
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