異能(The black Lantern of darkness) 山崎烝

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異能(The black Lantern of darkness) 山崎烝

 新撰組の構成員はその殆どが、幹部による検分を経て入隊している、腕利きの剣客達である。  それは、剣だけが能、という人物の寄せ集めとも言えた。  その中で、監察の山崎(すすむ)は少々訳が違う。独自の人脈、金策の腕前、更には医療の心得など、この人斬り集団の中では異能と呼べる類の才に優れていた。  ただ、信用に足る記録に乏しく、未だもって謎の多い人物である。  立場上、斬り込みの際に最前線へ立つ役目ではなかった。  が、山崎は裏方でありながら、剣気盛んなことを最も評価する新撰組局長の近藤勇から、随分愛されていたことが伝わっている。  江戸時代末期、幕府による京都の治安維持の為に置かれていた新撰組は、その性質上、長州、薩摩、土佐、水戸等々、諸藩入り乱れての諜報合戦の中にあった。  副長土方歳三は情報戦に腐心し、幕府に敵対する藩の間者と疑わしき者があれば、容赦なく隊士を斬る。  その為の情報の収集にも、山崎が属する監察(かんさつ)方は活躍した。同時に隊士にとっては、どこを取って二心を疑われるか、監察は内部の脅威であった。     
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