いらっしゃい

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テレビに映る夫婦――孝雄とキヌは、スーツ姿の冴えない男と艶やかに着物を着こなす和風美人であった。 『奥様は姉さん女房なんですなぁ』 『ええ、お恥ずかしながら……』 口元を隠し上品に笑うキヌの横で、孝雄は始終ニヤけている。 『お二人の馴れ初めは?』 『妻にスカウトされまして』 『スカウト?』 『良い仕事があるぞと声をかけられたと言いますか……』 『奥さん、それホント?』 『オホホ……実は昔、ほの字だった殿方に似てらしたもので……』 『ただの逆ナンじゃないですか!』 どっと笑いに包まれた会場。 テレビを見ていた吉郎もケタケタと笑った。 「何だか俺とお前の出会いに似てるなぁ」 「何言ってるの、アタシには昔惚れてた男なんて居ませんよ」 初子は化粧をしながらしっかり聞いていたらしい。 テレビの中では、その後の二人のやり取りや結婚に至るまでを面白おかしく話している。 「でも俺に一目惚れしたからのこのこついて来たんだろ?」 「馬鹿ねぇ、手頃なのがあなただっただけよ」 「意地張っちゃって」 紅を引いて鏡台の引き出しに化粧道具をしまった初子は、櫛で長い髪を梳き始めた。 『ご主人、前は何のお仕事してたの?』 『前職は一応霊能者をやっておりました』 会場がどよめいた。司会者もわざとらしく驚いている。 『霊能者さん!そりゃまた珍しいですな』     
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