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皆まで言う必要もなかった。昨日まで住人だった人間が、悪霊と化した可能性が一番高い。
「でも、もしそうなら・・・」
ペルスは、周囲を見回した。もしそうなら、家がここまで無事で残っているのは、非常に違和感がある。つまり・・・なぜ燃えずに残っているのか?
「リオ、ここって家族構成、何人だった?」
「あ、えっと、確か・・・三人。父親と母親と、息子が一人・・・息子さんはまだ学生だったはず・・・それから」
続きを言おうとしたリオを、ペルスは、自分の唇に人差し指をつけて「しいっ」と制した。困惑しているリオに、あごだけを動かして「あれを見ろ」と合図する。
そこは、二階のベランダだった。ベランダから、干した洗濯物のようなものが、ひらひらと風に吹かれている。否、洗濯物ではなかった。カーテンだ。水色の厚手のカーテン。その角は黒く焼け焦げて、一部が消失していた。
「間違いないな・・・」
二人は同時に肯いた。この家から悪霊が発生した。それは確定だ。
しかも、いまだ相当近くにいる。喚き声の振動は、靴底を通して相変わらず二人の体に届いている。
二人とも、自身の左大腿部に手を伸ばした。銃を握る。
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