第一部(その二) クンド警団<紺>

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 だが、先ほどリオが使った普通の拳銃ではない。握りから銃身にかけては丸みを帯びており、特に弾丸を装着する部位は見当たらない。銃口の先からは、注射器の針先のようなものが見えている。握りの底にはチューブらしきものが付いていて、それは背中に背負っている(マントに隠れて外からは見えない)容積にして一リットル程の金属製容器と直結している。  容器の中身は、液体窒素だ。引き金を引けば針が飛び出し、突き刺した相手の体内に液体窒素を注入することができる。  悪霊が出現してから十五年。その間の人類の最大の発見は、液体窒素が悪霊を破壊するのに絶大な威力を発揮するということだ。  水ではまったく消すことのできない悪霊の炎を、液体窒素は、ほぼ一瞬にして鎮火させる。それだけでなく、悪霊の体も凍結させ、その活動を完全に停止させることができる。なぜ液体窒素が有効なのか、科学的には解明されていない。だが、それが事実だ。  銃・・・通常「アイスガン」と呼ばれている・・・を片手に、二人はカーテンの焼け焦げから、家の外壁の黒い煤へと視線を移動させた。煤は外壁の一階部分にへばりつき、そのまま庭の草を焼き、庭にある井戸まで続いていた。 「井戸?」  リオが、独り言のようにつぶやいた。アイスガンを構えたまま、二人は、そろりそろりと井戸に近づいた。  井戸には、厚さ三センチ程の木製の板で蓋がされていた。その上に、コンクリートのブロックが、板が見えないほど隙間なく、しかも二段重ねで積み重ねられている。
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