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アイスガンが、リオの手から離れて・・・悪霊にのしかかられた時に、衝撃で弾け飛んだのだろう・・・悪霊の手の下に収まっていた。
ペルスは、蓋を放り出し、自分のアイスガンを抜いた。あと三十秒が限界。それを超えれば、リオは焼け死ぬ。
引き金に指をかけたところで、ペルスの右脇腹に激痛が走った。
痛みと驚きで、声も出なかった。代わりに、一気に冷や汗が噴き出した。
激痛の箇所に視線を落とす。包丁の柄と、みるみる真っ赤に染まっていくシャツが見えた。
「え・・・な・・・」
なんで?
足から力が抜けた。立つことができない。傷口を天に向ける形で、崩れるように地に伏せる。
リオの悲鳴は、やがて絶叫に変わった。空気に肉の焦げる匂いが混じる。
リオが焼かれていく様子を、ペルスは目の前で見ていた。リオを助けなきゃ。そう思うが、体が動かない。
「ご・・・ごめんなさい・・・」
後ろで、誰かの声がした。聞いたことのない声だが、女だ。かぼそく震えている。なぜか、謝っている。
「でも、あの子は私の息子なの・・・こうするほか、ないのよ・・・」
ああ、そういえばリオが、ここは両親と息子の家族三人だって言ってたな。
で、悪霊がその息子か。
そして俺は、悪霊の母親に刺されたのか。
脇腹に、再び激痛が走った。母親が包丁を引き抜いたようだ。血が先ほどより大量に流れ出す。意識と視界が朦朧としていく。まぶたを閉じる寸前、ペルスは、悪霊が起き上がり、自分のほうに振り返るのを確認した。
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