第一部(その三) クンド警団<モスグリーン>

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 ミティは、アイスソードから手を離した。柄部分に変化はないが、鍔から下は悪霊の熱により溶かされ、原形をとどめていない。アイスソードは、常に使い捨てであった。 「あ・・・あああ・・・」  息子の死を認めたためだろうか。母親の手から力が失われた。ルングはそれを知ると、母親の手に込めていた力を緩めた。あごを引き、視線を落としてつぶやく。 「任務とはいえ、本当に残念です。申し訳ありま・・・」  ルングが最後まで言う前に、母親が猛然とルングの手を振り払った。血走った眼でルングをにらみつけ、躊躇なく包丁で切り付けてくる。 「貴様ぁぁぁーーーーー!」 「ルング!」  母親の咆哮と、ミティの声にかぶせて、銃声が鳴った。  一発、二発、三発。  三発とも、母親の体にめり込んだ。こめかみ、頬、それにあばらの間。  母親は、三箇所から血と肉片を飛び散らせながら、横向きに吹き飛んだ。そのままぴくりとも動かない。即死だった。  ミティとルングは、弾の飛んできた方向に顔を向けた。  自分たちのグループの隊長・・・名をシンという・・・が、まだ煙のあがる銃を片手に歩いてくるのが見えた。 「シン隊長!」 「ミティ、よくやった」 「あ・・・はい!」  ミティは、両足を揃え、右手を挙げて敬礼をした。 「状況を確認して、周囲を調べろ。戻ったら報告書を書くからな」 「了解です!」  ミティは、きょろきょろと周囲を見回し、井戸の蓋に気付いて持ち上げ、しげしげと眺め始めた。 「ルング」 「あ・・・はい!」  ルングは、びくりとして返事をした。まだ呆然としていて、顔に浴びた返り血も拭っていない。 「怪我はないか」 「あ・・・はい。あの、ありがとうございます」 「礼はいらねえ。だが、次からは自分でやれよ」  ルングは、すぐに返事をしなかった。その表情に迷いが見て取れる。  シンは、髪と髪の隙間から、ルングをじいっと見つめた。
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