第一部(その三) クンド警団<モスグリーン>

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「おい、お前」 「・・・え? あ、はい!」 「人間が相手じゃ手を下せないか?」 「いや、そんな、その・・・」 「俺には、あれは人間に見えなかったけどな。悪霊そのものじゃねえか」  シンは、銃をホルスターに収めた。ルングは、シンと目を合わせず、何も答えなかった。 「まあ、いいさ。でもな、お前、俺と初めて会った時に言ってたよな?『ミティのことは、命に代えても守る』って。だから、俺はお前を自分のグループに選んだんだよ。こいつ、本気だって思ったからだ」 「・・・」 「でも、ためらうようじゃ先が思いやられる。そんなんでお前、本当にミティを守れるのか?」 「・・・」  沈黙しているルング。シンは、ふーっと鼻から息をつくと、ぽんぽんとルングの背中を叩いた。 「悪い。今のは言い過ぎたな」 「いえ・・・本当のことですから」 「ところで、周囲の調査を頼む。ミティ一人じゃ、一週間かけても収穫がなさそうだ。あいつ、耐性A以外、一つも取り柄がないからな」  見ると、ミティは熱心に、井戸の蓋を穴の開くほど見つめていた。 「は・・・了解です!」  ルングは、顔を粗く手の甲で拭うと、ミティのそばへ走っていった。  二人が動き出すと、シンは、リオとペルスのそばへ移動した。  見る前から分かっていたが、無残な死体だった。  マントは、耐熱の許容範囲を超えて、焼けて崩れていた。悪霊の炎は、二人の服、髪、肉、骨まで達しており、どちらが誰なのか、一目では判別もできない有り様だった。  シンは、死体の一つにかがみこむと、マントの胸部分を調べた。マント自体は見る影もないが、警団バッジは煤けながらも焼けずに残っていた。バッジをマントからむしり取り、裏側が見えるようひっくり返す。  そこには、ペルスの名前とコードナンバーが刻まれていた。  シンは、同じことをもう一つの死体にも繰り返した。バッジの裏側に、リオの名前とコードナンバーを確認する。  しばらく無表情に眺めていた。その間、数回瞬きをした。 「シン隊長!」  ルングに呼ばれ、シンは声のしたほうに首をひねった。その時、二つのバッジをポケットにしまいこんだ。ルングとミティのほうへ歩き出す。
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