86人が本棚に入れています
本棚に追加
/315ページ
第一部(その四) ロウト兄ちゃん
一時間後、三人はクンド警団の本部にいた。
シンは、ルングには事後報告書の作成を、ミティには事件現場後処理のための申し送りを命じた。
「それが済んだら、次の任務まで休息だ。いつでも動けるよう、よく休んでおけ」
「はい!」
くるりと背を向けたシンに、ルングが尋ねた。
「シン隊長は、どちらへ?」
シンは、振り向きもせずに答えた。
「団長に会ってくる」
団長とは、クンド警団の本部団長のことである。クンド警団にはいくつも支部があるが、それらをすべて束ねる最高指導者でもある。
シンは、本部内の廊下を歩き、途中すれ違った内勤の団員に、団長の所在を尋ねた。その団員は、相手がシンだと知ると、えらくしゃちほこばった敬礼をした。
「えっ、あっ、だ、団長ですか? 確か、大会議室にて、人類生存対策のための会議に出ておられます! ですが、予定ではもうじき終わられるかと!」
「そうか。じゃあ、団長の部屋で待つことにする。ありがとな」
シンが通り過ぎた後も、その団員はしばらくシンの背中に目が釘付けになっていた。同性だし、年齢もシンより一回り上だったが、目を輝かせてほうっとため息をつく。
「あれがシン隊長・・・。まさか、会話できる日が来るなんて・・・」
独り言をつぶやくと、団員は、うきうきした足取りで仕事に戻った。
最初のコメントを投稿しよう!