第一部(その四) ロウト兄ちゃん

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第一部(その四) ロウト兄ちゃん

 一時間後、三人はクンド警団の本部にいた。  シンは、ルングには事後報告書の作成を、ミティには事件現場後処理のための申し送りを命じた。 「それが済んだら、次の任務まで休息だ。いつでも動けるよう、よく休んでおけ」 「はい!」  くるりと背を向けたシンに、ルングが尋ねた。 「シン隊長は、どちらへ?」  シンは、振り向きもせずに答えた。 「団長に会ってくる」  団長とは、クンド警団の本部団長のことである。クンド警団にはいくつも支部があるが、それらをすべて束ねる最高指導者でもある。  シンは、本部内の廊下を歩き、途中すれ違った内勤の団員に、団長の所在を尋ねた。その団員は、相手がシンだと知ると、えらくしゃちほこばった敬礼をした。 「えっ、あっ、だ、団長ですか? 確か、大会議室にて、人類生存対策のための会議に出ておられます! ですが、予定ではもうじき終わられるかと!」 「そうか。じゃあ、団長の部屋で待つことにする。ありがとな」  シンが通り過ぎた後も、その団員はしばらくシンの背中に目が釘付けになっていた。同性だし、年齢もシンより一回り上だったが、目を輝かせてほうっとため息をつく。 「あれがシン隊長・・・。まさか、会話できる日が来るなんて・・・」  独り言をつぶやくと、団員は、うきうきした足取りで仕事に戻った。
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