第一部(その四) ロウト兄ちゃん

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「何人なんです?」 「・・・約三千五百万人だ。十五年前、悪霊出現直後の半数にまで減少している」  ロウトは、腕組みをして前をまっすぐに見据えた。 「人類生存対策か・・・。もう何度も話し合いをしているが、名案は一向に出て来ない。出てくる予感すらしない。なにしろ、人類=悪霊だからな」  そこで、まったく面白くなさそうに「ははっ」と短く笑った。 「だが、対策を講じることをやめるわけにもいかない。やめたらそこで・・・」 「団長。話の途中で申し訳ありませんが」  シンは、地図から離れてロウトの横に立った。 「うん・・・なんだ?」 「その人口ですが、ついさっき、マイナス二になりました」  ポケットから、警団のバッジを取り出し、ロウトに差し出した 「これは?」 「ペルスとリオのバッジです」  それだけで、ロウトはシンの言わんとすることを察した。殉職者のバッジを受け取る。 「それは・・・務めと報告、誠にご苦労だったな」 「いえ」  しばし、沈黙があった。先に口を開いたのはロウトだった。 「補充は、二人でいいのか」 「ええ・・・あ、いや、やはり」 「三人に戻すか? お前の希望でお前のグループだけ五人編成にしていたが、お前にもパートナーがいないと不便だろう?」 「いえ、補充はいりません」 「そうか・・・」  一度肯いたあと、ロウトは、困惑気味にシンを見上げた。 「え? いや、何?」 「補充はけっこうです。しばらく俺のグループは、俺とミティとルングの三人で任務に当たります」 「なんだと? いや、しかし」  ロウトは、今でこそ団長であり現場から退いているが、かつては最前線で悪霊退治に当たっていた。任務の困難さについては、重々承知だ。
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