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おばあちゃんの心臓はなんとか自分の力で動いてくれているものの、その律動は弱々しく、このままでは数時間以内に止まってしまうという。告げられた事実はあまりに残酷で、わたしたち家族は打ちのめされるしかなかった。
「心臓が止まっていた時間を考慮すると、脳の損傷は避けられない状態です。ご年齢を顧みれば、人工心肺などの手荒な処置は慎重にならざるを得ません」
「つまりは、もう」
言葉の裏に隠された想いに、思わずわたしの口から言葉が漏れた。赤崎先生は喉仏を揺らした。
「助かる見込みは低い、ということです」
実質、それは死亡宣告だった。気がつくとわたしの足がひとりでにふるえはじめた。やだわたし、なんでふるえているの。
「すこし、時間を頂けませんか」父が代表して言葉を絞り出す。
「家族で、話がしたいです」
「分かりました。結論が出ましたら、またお呼びください」
赤崎先生の背中に一礼して待合室に戻った。意気消沈のわたしたち家族に、説明に同席した看護師さんが寄り添ってくれる。
「突然のことで、驚かれたことでしょう」
「ええ、とても」母が痙攣したように眉をぎゅっと寄せる。
「だって、今日の朝まで、元気だったのに」
わたしたちは沈痛な面持ちで、おばあちゃんのこれからについて話し合った。
「おばあちゃん、どうしたいでしょうね」
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