光明流転の剣(like a Rolling Stone) 藤堂平助

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光明流転の剣(like a Rolling Stone) 藤堂平助

 幕末。  夜の京都で、息を切らせて走る者達がいる。  逃げる人影が三人。追うのが二人。  逃げている内の一人が、 「抜こう、もう戦おう」 と刀の柄を握った。 「抜かん、(かな)いやせん」  他の二人が首を振る。  彼らを追う人影は、三日月が薄く照らす京の狭い路地を、風のように駆けて来る。 「俺は戦う。新撰組がどうした」  そう言って、先程の一人が鯉口を切って振り返った。 「玄、お前ッ」 「いや、確かに走っても逃げ切れん」  残りの二人も、意を決して足を止め、抜いた。  玄と呼ばれた男が、最も先頭に立って追っ手に相対している。  追っ手の内一人の影が、その()と交錯した。 「壬生浪(みぶろ)が!」  叫んで、玄が切り下げる。  だが、彼のそれとは格の違う剣閃が三日月の下に舞う。  宙に飛んだのは玄の首だった。  体を整えて待ち受けていた剣士の剣を、この敵は全力疾走しながら上回って斬った。追っ手の達人振りに、あっけに取られた残る二人の手から、刀がポトリと落ちる。 「拾いな。待つ」  追っ手にそう言われ、慌てて二人がしゃがみ込んだ。そうして前に差し出される格好になった首を、追っ手の剣が易々と、二ついっぺんに薙いだ。     
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