2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
光明流転の剣(like a Rolling Stone) 藤堂平助
幕末。
夜の京都で、息を切らせて走る者達がいる。
逃げる人影が三人。追うのが二人。
逃げている内の一人が、
「抜こう、もう戦おう」
と刀の柄を握った。
「抜かん、敵いやせん」
他の二人が首を振る。
彼らを追う人影は、三日月が薄く照らす京の狭い路地を、風のように駆けて来る。
「俺は戦う。新撰組がどうした」
そう言って、先程の一人が鯉口を切って振り返った。
「玄、お前ッ」
「いや、確かに走っても逃げ切れん」
残りの二人も、意を決して足を止め、抜いた。
玄と呼ばれた男が、最も先頭に立って追っ手に相対している。
追っ手の内一人の影が、その玄と交錯した。
「壬生浪が!」
叫んで、玄が切り下げる。
だが、彼のそれとは格の違う剣閃が三日月の下に舞う。
宙に飛んだのは玄の首だった。
体を整えて待ち受けていた剣士の剣を、この敵は全力疾走しながら上回って斬った。追っ手の達人振りに、あっけに取られた残る二人の手から、刀がポトリと落ちる。
「拾いな。待つ」
追っ手にそう言われ、慌てて二人がしゃがみ込んだ。そうして前に差し出される格好になった首を、追っ手の剣が易々と、二ついっぺんに薙いだ。
最初のコメントを投稿しよう!