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二人の旅そして再会
城下町から街道を歩き、二人は小さな宿場町にたどり着いた。
「まずは旅籠に泊まって旅姿に着替えよう。お互いにこの姿では目立つ」
大きな旅館に入り、ぽんと気前よく銀子を払った姫に十郎は驚いた。
「姫様。これから当てのない旅になるので銀子は節約してください」
「そうだ十郎。私はもう姫ではない。一人の町娘だ。「お雪」と呼べ」
雪姫がなにやら楽しそうなので、十郎は黙ることにした。
ゆったりとした部屋に入ると、布団を敷く間もなく雪姫は眠ってしまった。
十郎は、その姿を見つめると悶々とし始めた。
(……寝顔も美しい。いかん。とてつもなく緊張してきたぞ)
そのとき、天井がかすかな音を立てたが、十郎は気づかなかった。
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