30人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
覚めてきた意識の中で、十郎はぼんやりと昔を思い出していた。
十郎の従姉キノは戸隠の里きっての凄腕くノ一だった。
小具足などの体術に優れており、里では主に後進の指導に当たっていた。
十郎も散々に痛めつけられ、最低限の体術を身体に教え込まれた。
そんな彼女の裏の任務がいわゆる「抜け忍狩り」である。
ときには村娘に、町娘に、舞妓などに化けては執拗に裏切り者を追う。
彼女が仕留められなかった獲物はいないと里では言われていた。
よみがえった恐怖で頭がいっぱいになったとき、十郎は目覚めた。
「十郎。大丈夫か? だいぶ唸っていたぞ。汗を拭いてやる」
目の前に心配そうな雪姫の顔があった。十郎はすぐに飛び起きた。
「姫様! 逃げよう! 今すぐだ。俺たちは殺される」
最初のコメントを投稿しよう!