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「なんと! 十郎めがしくじったというのか。おのれ不肖の息子が!」
十郎の父は満月幸之助といい、戸隠の里では知られた一家の家長である。
「お館様。失礼ながらその件にて出浦家の遼次が様子伺いに来ております」
小者が告げると幸之助は控えの間へと急いだ。
「遼次か。やはり耳が早いな。恥ずかしい話だが十郎めは万死に値する」
遼次は十郎と同い年で親友と言っていい間柄だ。忍術の腕は一級品である。
「よろしければ私めが十郎をひっ捕らえてまいります。お任せあれ」
幸之助が黙って頷くと、遼次は風のように消えた。
(十郎。お前のことだから追っ手に気づくまい。俺が助けるまで待ってろ)
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