バレンタインの夢

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バレンタインの夢

2月11日 「ふーん、ふふーん、ふふふふーん」 今の私はすこぶる機嫌がいい。そう、道行く人が、この子めっちゃ鼻歌歌ってるな!とこっちを振り返るレベルには。そんな私の鞄には友達のさっちゃんからもらったチョコが入ってる。今日2月11日は土曜日。今日のクラブが終わればテスト直前の期間に入るからそれまで1週間学校はお休み。要は一生懸命勉強しろと。つまり友達と会えなくなる。ということは14日の楽しみは、誰と、どこでどうしたらいいの!?去年は試験と重なったから我慢したのに、何のために大学生になったの!?とチョコ好きな私がそう思っていた矢先の出来事だったのだ。 帰り際にさっちゃんが、声をかけてくれて、そしてチョコをくれた。3日早いけど、渡せないから、と。はにかみながら。小柄でもともと笑うとかわいらしい感じの友達なんだけど、上目づかいでマフラーで口元が隠れて…さらにかわいく見えた。いや、大丈夫、別に私も女だけど好きになったとかそういうんじゃ。 そこじゃない。もちろんチョコをくれたのも本当にうれしかったんだけど。 「安奈ちゃん、ホワイトチョコ好きだったよね?これホワイトチョコが有名なところらしいの」 そう!そこ!覚えててくれたなんて!友達になって1年もしてなくて、チョコの好みのことしゃべったのも半年とかだいぶ前だったはずなのに!…ちょっと誰よ、こんな喜び方するなんて今まで友達がいなかったんじゃないかって?うるさいわね。いいの。誰が何と言おうと、大好きな友達から大好きなチョコをもらって。私はご機嫌なのである。 「ふふふーん、おっとと」 いけない、にまにまして自宅を通り過ぎるところだった。いつもよりもいい感じのペースで階段を3階まで上がって 「ただいまー」 とか言いながら。誰もいないんだけどね。一人暮らしを始めたころはこの何もかえってこないのがすごくさみしかったんだけど。今じゃなれたもので。炬燵の電気をつけておいてから手早く料理の支度をする。簡単なものでいいや。今日からテスト勉強しなきゃ単位おとしちゃう。  鞄からさっちゃんからのチョコを取り出す。バレンタインだけど、クリスマスカラーの緑と赤の背景に白熊がウインクをしているかわいいラッピング。
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