古内と新田、入学する

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新田はもともと待機児童だ。同じく待機児童だった私には新田が考えていることがよく分かる。新田とは保育園で一緒になったが、保育園の頃からこの世に絶望した表情、つまり圧倒的無表情を見せていた。 私、古内は精一杯の小学生らしさをもって、新田に話しかけた。 「新田、入学式に来た感想はどうだ?暗黒の未来のスタートはまさにここから始まると言っていい」 私のこの主張に対し、新田は無表情だった。どうせお前は絶望しているんだ。この世に何も新しいことなどないと気付いているお前は。 窮屈な体育館に閉じ込められ、くだらない未来の象徴とも言える校長の挨拶が始まる。 頭がはげており体格がでかい校長は、うすら寒い笑顔を作り、こう挨拶した。 「新入生の皆さん、入学おめでとう!」 ああ、なんと胡散臭い笑顔なのだろう。大人を演じることの苦しさが痛いほどに伝わってくる。 「新生活に戸惑うことも多いと思いますが、小学校に慣れていけるように頑張りましょう!では教頭先生、私の横に来て下さい!」 希望を精一杯演じる笑顔を保ちながら、校長が教頭を壇上に呼び込む。 やせ細って貧相な顔をした教頭が怯えた表情で校長の隣に歩み寄る。校長も教頭もともに50代。どちらもなりたくない大人の象徴だ。 ここで、思いがけない出来事が起きた。
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