1.宣戦布告はなめらかな口溶けのように

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 書斎。ソファーとデスクと本棚。色もデザインもシンプルな家具が並んだ聖史郎の部屋。本棚には国内外の医学書がずらりと並ぶ。その一角に海外の恋愛小説文庫が並び、異彩を放っていた。  部屋着に着替えた聖史郎はデスクに腰掛け、小包の中身と対面した。衝撃吸収材がわりの紙に包まれ、正方形の真っ赤な箱が入っていた。  麗美からもらったプレゼントが記憶に新しく、バレンタインプレゼントだと直感した聖史郎。 しかしまたも期待を裏切られた。中には名刺サイズの紙が1枚だけ入っており、 「@crusaders」 と中央に印字されていた。箱や段ボールの内側を探ってみたが、他には何も無い。 「クル…セイダー?」  不思議がる聖史郎だったが、深夜に聞くわけにもいかない。仕方なく「@crusader」について調べるためにパソコンを立ち上げた。  「十字軍」「革命運動者」「聖戦」といった結果が並ぶ中、視線をスクロールさせていくと、 「@crusaders-ChitChat」 という1つのアカウント名が目に入った。クリックすると「ChitChat」(チットチャット)というショートメッセージSNSへとつながる。     
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