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「@crusaders」のプロフィール欄には“正義の味方”とあるだけで、他に個人を特定できるものは何もない。
タイムラインを眺めていくと「今起きた」「おなか減った」「大切な仲間たちとランチ」など、日常の独り言が並ぶ。
(紗江のやつ、一体何がしたいんだ?)
と頬杖をつく聖史郎。
画面を下にスクロールしていくと、1枚の写真が目についた。見覚えのあるマンションの写真。大理石の門構えと間接照明、そして「ベイサイドキャッスル」という名前で記憶のシナプスはつながった。聖史郎が住んでるマンションだった。
(あいつ、近所に越して来たのか? それとも、別の人?)
SNSで親近感を覚える事は珍しい事ではない。同じ出身地、同じ趣味、同じセンス……。趣味や嗜好が同じ人間とつながりたいという欲求を満たすためには、うってつけのツールでもある。かすかだが、聖史郎の中でも@crusadersに対する親近感が芽生えていた。
タイムラインをスクロールして、つぶやかれた発言をさかのぼっていく。他愛もない発言ばかりだったが、その中にいくつか気になる点も。
聖史郎の職場である大学病院や、実家のある最寄り駅の写真、自分と同じ誕生日を祝う発言などが見られた。
妹のサブアカウントなのだろうか。確かに紗江なら自分のことを知っていてもおかしくはない。疑問を払えないまま、やがて発言は一番最初のものへとたどり着く。
3年前の2月14日から始まっていた。一般的にはバレンタインデーの印象が強いこの日だが、聖史郎にとってはもう1つ、決して忘れられない出来事があった。
視線はパソコンのモニターを見つつも、心は別のものを見はじめていた。微動だにせず、やがて目を閉じ、ある言葉を思い浮かべる。
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