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「不起訴」
その3文字が聖史郎の心の安定と家庭、そして未来を守ってくれる免罪符だった。
深く息を吸い、そして吐く。聖史郎には、2月14日が近づくと発作のように湧き上がってくる衝動があった。思えば麗美との関係を持ったのも、この衝動を抑えることが目的だった。
紗江の行動が理解できず、何気なくページを更新してみる。すると新たな発言が表示されていた。そこには再び、「ベイサイドキャッスル」の玄関が映し出された写真が表示されていた。発言のリリースは3分前。更にページを読み込む。
今度は1分前。マンションのエントランスホールの写真。
(うちの住人?)
@crusadersの行動が気になるあまり、発作はもう治まっていた。
聖史郎は再度ページを読み込む。すると新たに、
「あの日を忘れない」
と一言だけ現れた。更に読み込む。
「あの日、私は死んだ」
突然現れた意味深な発言に、聖史郎は釘付けになる。だが情報量が少なく意味も意図も読めない。ただこれで紗江の仕業でないことははっきりした。妹の紗江は人懐っこいところはあっても、人を不安にさせたり怖がらせるようなことはしない。それだけは間違いないからだ。
誰かに間違って送ろうとしたものだと確信した聖史郎は、急に気持ちが冷めた。同時に疲れを感じたため、今日は休むことに決めた。
(明日、聞いてみるか)
その結論に達したことで満足した聖史郎。最後にもう一度だけ更新してみた。
「私は2月14日を忘れない。保志宮 聖史郎」
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