聖戦のバレンタイン

2.聖戦はチョコよりも苦く

　結局仕事を早めに切り上げ、ウィークリーマンションへ逃げ帰った。数日前からここに泊まっている。真知子達には「インフルエンザの患者がピークを迎えてる。仕事が遅れていて、自分のせいで感染させてしまうのも悪い」ということにしてあった。電話口で泣きじゃくる夏海には申し訳なかったが、正直かまってあげられる余裕は全く無かった。
　マンションに帰ると、@crusadersの発言をしばらくチェックし、酒を飲んで無理やり寝る。ここ数日はその繰り返しだった。食事もほとんど喉を通らなくなっている。体調が悪そうに見えるのも当然だった。
　今日も、ジャケットとネクタイを脱いだだけの状態で雑にデスクに腰掛け、家から持ち込んだノートパソコンでChitChatをチェックする。
　パソコンの時計は2月14日20時を指していた。あと4時間で今日が終わる。結局いたずらだったのか…。飲みかけのウイスキーを瓶から直接流し込む。大きくため息を付き、頬杖をつくと、意識がゆっくりと落ちていった。

　次に気づいたのは携帯電話の着信音だった。慌てて画面を見ると、非通知でかかってきていた。寝起きのだるさを感じながらも、使命感にかられて電話に出た。