リンゴと未完

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 そんな古びた家の中で、冒頭のリンゴを見つけたのだ。  ホコリに覆われた床には英司の足跡だけがはっきりと残されており、最近誰かがこの家に入り込んだとは考えにくい。  動物が運んできたのだろうか、とも思ったが、傷一つないリンゴの表面から、それも違うようだ。  英司は頭をひねった。不思議なこともあるものだ。おばけの仕業だとしても、こんなリンゴ一つでは怖くもなんともない。  まあいいや、後で考えよう。気を取り直した英司は、リンゴをバックパックに放り込み、作業にとりかかった。  それから数時間後、汗とホコリで汚れきった英司はふらふらになりながら自宅に帰り着いた。真夏にエアコンも扇風機もない室内での作業は予想以上にきつく、もう少しで熱中症になる、と思ったところで今日のところは切り上げたのだ。特に深く考えず引き受けてしまったが、甘かった。車検代だけでは絶対に割に合わないバイトだ。あまり大きくない家のように見えたが、入ってみると思いのほか広かった。中には六部屋あり、そのすべてにありとあらゆるガラクタが積み上げられているのだ。車検代にタイヤ交換やその他の消耗品の代金も加算してやろうと心に決めた。それくらいしてもバチはあたらないだろう。
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