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「やあ、おはよう。なんの話?」
密かに探りを入れるべく、僕はそ知らぬふりをして親友の三羽に挨拶がてら尋ねてみた。
「オッス! なに、新しいアレのことだよ。おまえも当然知ってるだろ? 新しいアレ」
だが、あくまでも自然な体を装い、さりげなく訊けたと自画自賛していたその言葉が、予想に反して僕を危機に追い込むこととなる。
「え? ……あ、ああ、もちろん知ってるよ。アレのことだろ?」
逆に尋ねられた僕は、見栄を張って思わずそんな風に答えてしまった。
マズった……反射的とはいえ、大嘘を吐いてしまった……だが、僕だけそれを知らず、流行に疎い野郎だと思われるのはやっぱり嫌だ。
こうなったら、ここはなんとか知っている振りをして通すしかない……。
「だよな。新しいアレを知らないなんて、流行遅れもいいとこだもんな」
「あ、ああ。そうだよな。知らなかったら逆に恥ずかしいよ。ハハハ…」
知ってるふりをするためとはいえ、またも自分で自分の首を絞めるような嘘を重ねてしまう僕……。
「じゃ、当然もう試したんだよな?」
「も、もちろん。そりゃあ、すぐに試すでしょ?」
よせばいいのに相手の話に合わせようと、ますます己を危機に追い込む余計な一言まで付け加えてしまう。
「で、どうだった?」
「…………え?」
案の定、その嘘の上塗りは早くも絶体絶命のピンチを引き寄せることとなった。
「だから、試してみてどうだったんだよ? 新しいアレは」
……な、なんてこと訊いてくるんだぁぁぁぁ~っ!?
僕は顔に出さないよう必死で堪えながら、心の中では顔面蒼白になって大絶叫した。
こいつ、僕が知ったかぶってることわかってんじゃないのか? と思うようなことを嫌がらせのように三羽は訊いてくる。
そんなこと、アレが何なのかも知らないのにわかりっこないだろ? やっぱりわざとじゃないのか?
そのどこかニヤけているようにも感じる三羽の顔に悪意を疑う僕であるが、そうであろうがなかろうが、ここはなんとしてでも誤魔化さなくては……。
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