新しいアレ

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 でも、どう答えるのが正解なんだ? アレの正体が皆目見当つかない……JKばかりか、僕ら男子も含めて高校生がこうも食いついているとなると、やっぱりスマホのアプリかゲームだろうか? ……いや、食べ物ってこともありうるな。もしくはジュース……いや、待て待て。それを言うなら、ガムとか眠気覚ましのタブレットという可能性も……。  ダメだ。情報量が少なすぎてこれでは絞りきれない……ここで誤った回答をしようものなら、一瞬で知ったかぶりとバレてしまう。  ……となれば、残された選択肢はただ一つだ。もうあの一言だけでなんとか乗り切るしかない! 「うーん……まあまあかな」  僕は、天井を見上げて故意にインターバルを差し挟むと、さりげなく考える振りをしてからそんな曖昧な答えを返した。  〝まあまあ〟――なんと便利でスバラシイ言葉なのだろうか!?  まさに万能。最高の適応性と拡張性……今、この時ほどこの言葉の存在に感謝したことはない。  ゲームの感想であっても「まあまあ」。料理の味であっても「まあまあ」……どうだ! これならば、新しいアレがアプリだろうがお菓子だろうが、はたまた僕の想像だにしない未知の何かだろうが、すべてにおいて矛盾なくかわすことができるのである。  それに「良かった」や「悪かった」では、「どこが良かったの(あるいは、悪かったの)?」と、続けてさらなる具体的で厄介な質問をさせる隙を相手に与えてしまうが、「まあまあ」ではなんとも曖昧模糊としていて取っ掛かりがなく、次に何を訊けばいいのかもなかなか思いつけない……。  これで、もうそれ以上、話を広げられることもなく、ここで終了とすることすら可能たらしめる究極の一手なのである!  ……だが、僕はそれだけにとどまらず、さらに欲をかくと、もっと能動的に攻めへと転じる。 「そういうおまえはどうだったんだよ? 新しいアレを試してみて」  そう……今度は逆に、僕の方から三羽に尋ね返したのだ。  無論、こいつがどう思ったのかを単純に聞きたかったのではない。どうでもいいその感想からでも、〝新しいアレ〟の正体を探るための貴重な情報が得られるからである。
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