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「ちょっと、ちょっと!」
春の昼下がり、近所の商店街をふらりと散歩していると威勢の良い声で話しかけられた。
「少し見て行きませんか?」
二十代前半くらいに見える若い男は手に持っていたチラシを手渡してくる。
見出しには【メガネレンズ型装着式情報端末ついに発売!】と大きく載り、その下にはサングラスのようなものを付けた女性が微笑んでいる写真。
「あそこで実演販売しているので!」
男の指さす方を見ると電気屋の前に十五人程の人だかりができている。
最近、小説の資料を探す為に活用していたパッド型端末の調子が悪い。それに、初めて聞く型の端末に好奇心も疼いた。人だかりに少々気後れするが、実演販売を見学するのも悪くない。
販売用の簡易なテントには長テーブルがおかれ、その上にはいくつか色違いの眼鏡型デバイスがディスプレイされていた。その奥で四十代中ほどに見えるスーツの男性が黒のタイプの眼鏡型デバイスを客に見せながら説明をしている。
彼が販売員なのだろう。
「どうです、体験してみませんか?」
実演販売に近づくと目ざとく見つけてこちらに声をかけてくる。
少し見るだけのつもりが、これでは逃げられない。先にたくさんの客がいるのだからそちらを指名すれば良いのに。
「音声認識ですので、装着して検索したいものを言ってくださるだけで大丈夫です!」
自慢げに販売員は説明している。
「充電が終わったばかりのデバイスがありますので、これをどうぞ!」
手渡された青いスクエア型の眼鏡デバイスをかけてみる。つけ心地は普通の眼鏡と変わらない。
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