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「へ~、結構軽いですね」 レンズには検索ワードを入力してくださいと出ている。近未来的な感じで少し楽しくなってきた。 「それじゃあ…、猫!」 興奮気味に検索ワードを声に出す。 「ん?何だか検索カテゴリの選択と出たのですが…」 肩透かしに困惑する。気分はもうSF小説の主人公だったのに。勢いをそがれてしまった、 「ああ、それはですね!」 販売員は我が意を得た、といった風に周りの客にも聞こえるよう大きな声で説明する。 どうやらあえて事前に説明をしていなかったようだ。 「このデバイスは、画像、動画、文章、音楽といったいくつものカテゴリに対応しているのです!検索ワードの後にどのカテゴリの情報を検索するか指示を出せば、ほしい情報だけを探してくれます!もちろんその後指示を出し続けることでさらに絞っていくことが可能です!」 「はあ…。」 凄くはない。今どきの情報端末なら標準装備だ。むしろそれを自慢げに説明されても困る。 期待していた分ひどく落胆した。 「へえ、すごい!」 しかし、周りの客は盛り上がっている。男の勢いに載せられてしまっているらしい。 周りの客が機能を口々に賞賛する。 どうやらここでは落胆している私の方が少数派らしい。確かに普通だが検索端末としての機能を十分果たしているのだ、悪くはない。むしろ、良いのでは?周りの勢いに後押しされ、落胆していたモチベーションが少し回復する。 そうだ、これは実演販売。標準装備でも大げさに自慢するのは当たり前。むしろ、実は標準装備のものすらなかったと後程わかるより何倍も良いはずだ。 「おや、お客さん。今その程度かって落胆していませんか?」
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