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「それで、話したい事とは?」
「司さんは俺の事を『変わらない』と言ってくれましたよね?その理由が知りたいんです」
「理由を知ってどうする?それがお前にどんな意味がある?」
まさか質問を返されるとは思わなかった。
だけど、司さんが意地悪でそうしているのではないと、何となくわかったから、俺は自分の不安を伝えた。
記憶を失った当初、俺に不安は一切なかった。
目覚めた場所が学校である事や、自分がその学校の生徒である事は見てわかった。
だから自分が自分の事を覚えていなくても、自分を覚えている人はいて、身元も保証されていると確信できた。
今までの記憶が無くたって、そんな事大した問題じゃないと思っていた。
「だけど、現実は違った。記憶を失くす前の俺と、今の俺はあまりにも違いすぎる。本当にこの身体は俺の身体なのだろうかって不安なんです」
静かにじっと話を聞いている司さんと、俺は目を合わせる。
「俺は本当に『藤宮誠司』なんですか?」
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