1人が本棚に入れています
本棚に追加
◆
入院2日目。
水嶋さんのご両親がアルバムを持ってきてくれた。
ご両親は俺を不安がらせたり、焦らせたりしないよう、わざわざ記憶を取り戻させようとはしてこなかったので、俺から頼んで見せてもらった。
新しいアルバムがら古い方へと遡っていく。
ご両親はどう声を掛けたらいいか迷っているらしく、ソワソワしていたが、俺はそれらを無視してパラパラめくる。
昨晩、帰り際に父が言った事が頭に引っかかっていた。
ーー人間の記憶なんて当てにならない。お前に対しての評価だって主観が入って脚色されたイメージでしかない。本当のお前は、お前にしかわからないよーー
父のおかげで昔の自分に対しての負い目が消えた。
また水嶋さんに睨まれても、もう大丈夫だろう。
代わりに、本当の自分を探してみたくなった。
フニャリとした、だらしない、頼りない笑顔を見せている自分を眺めながらどんどん遡っていく。
小学校2年生の場所で、ピタリと手を止めた。
あの笑顔がない。
最初のコメントを投稿しよう!