白紙

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俺は丁寧に小学校3年生のページをめくる。 そこで、パラパラとめくっている時には見逃してしまった事に気づく。 小3のページで、あのだらしない笑顔を見せているのは自分ではなかった。 別の子である。 その子は小2のページには写っていない。転校生なのかもしれない。 そして小3のページであの子が消えたタイミングから、俺があの笑顔を見せている。 俺は何となくこの笑顔を真似しようとした。 そして背筋に悪寒が走り、慌ててその笑顔をやめる。 笑顔というものは、やろうとしてできるものじゃないと思っていた。 だけど、俺の身体はこの表情を覚えている。 心からくる自然な笑顔ではない。何度も練習して染み付いたように、この笑顔を覚えている。 「あの、水嶋さんのお母さん。この子、誰かわかりますか?」 「ああ、ああ、この子ね。転校生で、爽香とすごく仲が良かったのよ。転勤の多い家庭だったそうだから、半年ぐらいでまた転校しちゃったんだけどね」 俺の中で1つの仮説が立てられていく。 だけど、何故そんな事をしようと思ったのか、まだ理解が浅い。 俺はアルバムを閉じた。 そして目を瞑り、明日の退院に想いを寄せる。 どこに自分の家があるかも覚えていないが、それでも自分の部屋に何か痕跡があるはずだと、自分の部屋を想像しながら考えた。
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