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「誠司君!心配したぞ!」
「私たちの事わかる?!」
「いっつも心配かけさせるんだから」
精密検査を終えて、自身にあてがわれた病室に戻ると中年の男女が4人、それぞれ言いたい放題言葉を投げつけてくる。
「俺の両親と、水嶋さんのご両親ですか?」
水嶋さんとは俺を見て泣き崩れた女子高生・水嶋爽香(サヤカ)だ。今も病室の隅で俺を不審気に見つめている。
さっき聞いた話では、家が隣同士で家族ぐるみの仲だったらしい。仕事で忙しい両親に代わって、大変お世話になっていたとか。
「元気そうじゃないか。じゃ、俺は研究に戻る」
一人だけ黙っていた男がそれだけ言って、病室から去ろうとし、他3人にしがみつかれる。
これが父だろう。自分の思考回路とこの人の雰囲気が近しいのを感じる。
「精密検査は終わったばかりで結果なんてすぐに出ないだろ。他が元気そうなら俺にできることはない」
「だからってね、状態変わって急遽死亡ってこともあるかもしれないのよ!」
「ちょっと、マナちゃん!その言い方は!」
父の発言を戒めるのは母だろう。自分に対する配慮のなさが潔い。
「これが最後の会話になったら、どうするの?」
「……それもそうだな」
帰りかけていた父が自分に向き直る。
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