白紙

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「愛しているぞ……妻の次に」 「もう、あなたったらぁ」 この茶番劇を俺はいつもどんな気持ちで見ていたのだろうか。 「じゃ、これで、」 「いやいや、ダメだろう!」 父に水嶋さんのお父さんがまだしがみつくから、俺が言葉を挟む。 「いえ、研究に戻ってもらってください。あなたにとって必要な研究なんでしょう?俺の事は気にせずに」 「なんだ。爽香ちゃんから、お前が頭打って変わったと聞いていたが、何も変わっていないじゃないか」 表情の動きが少ない人だが、かすかに微笑む。 「それじゃ、後はみんなで好きに騒いでな。あまり病院に迷惑かけるなよ」 残っている3人が口々に何か言ってくるが、そんな話よりも父の捨て台詞が耳に残る。 ここに至るまで、水嶋さんや友人らしき人たちが俺のことを色々教えてくれたが、最終的に彼らが口にするのは「変わった」「本当に誠司なのか」と疑問の言葉ばかり。 確かに彼らが教えてくれた記憶をなくす前の俺は、今の自分では想像ができない。 いつも人当たりの良い笑顔を絶やさず、少し弱気でおっちょこちょい。クラス内では落ちこぼれ的立ち位置で、水嶋さんが保護者のように守ってくれていたおかげでイジメの被害にもあっていなかった、との事。
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