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起・あの人気お笑い番組の中のコント
舞台に若手芸人のヤスオとタカシが現れる。
ヤスオは少し小太りな三枚目、タカシは眼鏡をかけた細身の神経質そうな男だ。
コンビ結成から12年経ち、大人気とは呼べないがそこそこレギュラー番組も
増えており、少しずつ軌道に乗ってきたと二人は自負している。
さて、コントが始まった。場所は自宅を想定して家具が置かれている。
ツッコミのタカシはソファに座ってスマートフォンをいじっているが、
そこに、ボケ担当のタカシが話しかけた。
「ねえねえ、たっくんたっくん! 童話についてなんだけどさ」
「唐突だな、お前?! なんだよ、童話って! いきなり過ぎるだろ。
普通その前に何か前フリするだろ!」
タカシのオーバーリアクションなツッコミに対し、
ヤスオはやや早口で無感情に返答する。
「じゃあ最近子供の寝かしつけに絵本を読んでるから気になってさ」
「棒読み過ぎぃ~! じゃあってなんだよ! 大体お前子供いないじゃねえか!」
「オマエが前フリしろって言ったんだろ! あ、リアルでは奥さんと子供募集中です」
「奥さんはともかく子供もかよ! あといきなり宣伝するな!」
観客から笑い声が上がる。これは某人気お笑い番組のテレビ収録なので、
スタジオには番組の用意した観客席がついているのだ。
「で、話を戻すけどさ」
「ああ、童話? 童話がなになに?」
「いやさぁ、時代についていけてないんじゃないかって」
「そりゃ昔話だからな。時代についていけてたら逆におかしいよね。
シンデレラのカボチャの馬車がフェラーリだったらそりゃおかしいわ」
「そういうことじゃないんだよなぁ」
ヤスオのあからさまに小ばかにした態度にタカシはイライラした演技で反応する。
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