転・現実はシビアである

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転・現実はシビアである

「というわけで、相手役は農民です」 「農民かぁ。まあ、いいけどね。浦島太郎とか漁師だし。でもさ、接点なくない?  どこで二人は出会う訳よ? 女王様と平民だよ?」 「そこはほら、女王様はお城の生活が退屈で下々の視察に出掛けるとか」 「お、ちょっとそれっぽくなってきたじゃん。女王様はお城を抜け出して  農民の男と出会った。それで?」 「瓜とヘチマの違いを熱く語る男の姿に惹かれる訳です!」 「惹かれねえよ!! なんだよ、瓜とヘチマの違いって! 確かに似てるけど!」 「ちなみにひょうたんには毒があります。一緒に育てると危険です」 「どうでもいいわ! ……まあ、いいよ。とにかく主人公と男が出会って 、  その後どうするの? お約束だと悪い魔法使いとか出てくるんだけどさ」 「悪い魔法使いも時代遅れだよね。現代に魔法使いいないし」 「それで? 今風にするとなによ? まさかヤクザとか言わないよね?」 「さすがタッくん、近い」 「近いのかよ!」 「敵は悪徳消費者金融です!」 ここはあえて激しくツッコまない。コントはメリハリが大事だからだ。 「夢も希望もあったもんじゃねえな、おい。確かに悪いヤツだけどさ。  せめて昔話風に金貸しって言えよ」 「男は病気のお母さんを治療するために悪い金貸しから金を借りているのですが  返せなくて捕まります。そして強制労働させられる訳ですね」 「お、それを主人公の女王が助けに行くってことか」 ここで再びヤスオのアドリブが飛び出る。 「女王『様』ね」 「どうでもいいわ、そのこだわり!」 演技ではない魂のツッコミだ。観客にはさぞや迫真の演技に見えたことだろう。 「で、色々あって女王様が悪いヤツをやっつけて男を助け出しました」 「その色々が一番大事じゃないの? 起承転結の真ん中じゃん」 「全部話すと尺が足りなくなるのでカットしました」 「尺言うなって。で、二人は結婚するの?」 「無事、男を助け出した女王様は……」 「女王様は?」 「その後、婚約者の王子様と結婚することになりました」 「なんでだよ?!」 その日一番のツッコミが炸裂する。 余談だがこのコントのネタを考えたのはヤスオであり、 実際に台本を読んだ時、タカシは同じようにツッコミを入れた。
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