承・時代は強い女だ

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承・時代は強い女だ

「じゃあどういうことなんだよ?」 「まずは童話全般における女性蔑視がいけないよね。今の男女平等に合ってないよ」 「あぁ、それはあるかもな。白雪姫とかいきなり王子様にキスされてるけど、  あれがブサイクだったりオジさんだったら犯罪だよね」 「それは別にいいんだけど」 「いいのかよ!」 また客席からドッと笑い声が起こる。二人は台詞が飛ばないように芝居を続けた。 「やっぱりさ、ヒロインはお姫様っていうのがいけないよ」 「え、なんで? いいじゃん、お姫様。女の子はお姫様好きでしょ?」 「だってさ、今の女性は強いんだよ? お姫様ってなんか弱々しいし  守られてるイメージあるじゃん」 「確かにお姫様は守られてるイメージあるかもなぁ」 「だからさ、今の時代に合わせてもっと強いヒロイン像が求められる訳よ」 「なるほど。今は女性も戦う時代だもんなー。女騎士とか?」 「キャリアウーマンね」 やや食い気味にヤスオが断言する。 「いやいやいや、童話にキャリアウーマン出てきたらおかしいから!」 「じゃあ女王様で。女王サ・マね!」 「なんで様を強調するんだよ……別のものに聞こえるだろ……」 「で、相手が王子様ってのもありがちでつまんないよな」 「えー、女の子は王子様好きじゃん。金持ちだしかっこいいし」 タカシの反論に対し、ヤスオは訳知り顔で説明してみせた。 しかしその理由が現実的でなんとも酷い。 「主人公の設定で女に媚びたんだから男の設定は男に媚びないとバランス悪いだろ」 「媚びるって言うな」 「現実的に考えて王子様なんていません」 「そりゃ童話だからな? お前昔の話だからな?」 「王子様が主人公だとイギリスとかスペインとかしか舞台に出来ないし  時代は今やグローバルです」 「具体例出すなよ! あと童話にグローバルさっている?!」 ヤスオの悪いクセだ。いきなりアドリブを入れてくる。 今回はいつもの番組のスペシャル版であり生放送だというのに困ったヤツである。 だが、付き合いの長いタカシは冷静にツッコミを入れてみせた。 伊達にこの男と12年も組んでいないのだ。 「つまり俺が言いたいのはね、男は誰だって女王様に出会えるチャンスがある!」 「さっきのお前の発言のせいでなんか危ない話にしか思えねえよ!」
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