結・コント終了

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結・コント終了

「今までの話はどこ行った?! 農民の彼は?!」 「いやー、現実的に考えて身分の差は覆しがたいなって」 「身も蓋もねえよ! 困難を乗り越えてこその童話だろ!  なんかもうめちゃくちゃじゃねえか!」 「それに現実的に考えて環境の違い過ぎるカップルは別れることが多いし……」 「確かにそうだけど! 童話だから! ファンタジーだから!」 「……それにこの結末は変えられない」 ヤスオは急に真剣な顔になり声のトーンも変わる。 「え……なんで?」 「実はこの話は童話じゃなくて実話だからだ」 「ハァ?! 実話なの、これ?! こんなムチャクチャなのに?!」 「俺の前世がその農民だったって占い師の婆さんが言ってたんだ」 「マジかよ……そういえば、お前んち農家だったよな……」 「瓜とカボチャ作ってる……」 「それは心底どうでもいいけど……」 「そんな訳で、もしこの番組を見てる人に女王様みたいな女性がいたら  俺の運命の相手です! 番組終わった後に連絡ください!」 「結局お前の宣伝じゃねえか!!」 スパァンとキレのいい音を立ててタカシがヤスオの頭をはたく。 「どうも、ありがとうございました!」 二人は観客に礼をして舞台から退場した。  放映終了後、今回は生放送なのですぐにアンケート結果が集計される。 その結果、二人は14組中5位であった。凄く良くはないが、けして悪くはない数字だ。  芸人としては一発屋になって消えるより、着実な人気があった方が 長期的に見てかえって得である。次も頑張ろうな、とタカシが 声を掛けるとヤスオはそんなことより一杯行こうぜと返す。 ヤスオはコントの役柄通り、能天気でマイペースな男なのだ。 まったく、しょうがないなと笑いながらタカシはヤスオと共に居酒屋へ向かった。
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