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『あ~た~らし~い~あ~さがきたっ  きぼ~うの~あ~さ~っがっ』 「―――――来なくていい」 枕元の目覚まし時計がセットした時間になる前に、日本人なら誰でも知ってる例の音声に叩き起こされた。 時刻は6時25分。ラジオだから間違いはねえ。 俺の住んでる安アパートの壁は薄くて、防音なんてものはねえ。 というわけでプライバシーなんてものもねえ。 ないないづくしだ。 「新しい朝なんて来なくていい。クソくらえだ」 ひとり毒づいて、身体を起こす。 隣に住んでる爺はラジオ体操をやるのを朝の日課にしているらしい。 会社が近くて朝飯テキトーなら7時まで寝ていられる俺は、いつも叩き起こされる羽目になっていた。 苦情も入れられねえ。 歳に似合わずガタイのいい爺に文句言う、そんな度胸は俺にはねえ。 眠りが浅い。 原因もわかっていた。 「あ~~~……会社行きたくねえなぁ」 新しい朝のどこに希望があるんだか。さっぱりだ。 けだるい身体に鞭を打って支度する。 とはいっても顔を洗ってヒゲを剃り、くたびれたシャツとスーツに身体を通すだけだ。 あとは黒の通勤用カバンにいくつかの書類、USBメモリ。それから仕事用のボイレコ。 そのあたりを放り込んで、よろよろと立ち上がった。
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