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女は化粧があるから大変だなぁ。男も別に楽じゃねえけど。
そんないつもの、変わり映えのしない朝のはずだった。
冷えた部屋をろくに暖めないエアコンを切り、玄関を開けてアパートの部屋を出る。
そう、その時までは。
「……やけに静かだな」
外に出た時に思ったのはそれだった。
時刻は7時過ぎ。凍えるほど寒い冬の朝だが、さすがにもう外は明るい。
……なのに、車も人の気配もない。
独り暮らしの独身かジジババしか住んでないアパートを出れば、それなりに人は動いてる。
ここは23区内ってほどの都心でもねえけど、まぁそこそこの都会だ。
―――なのに、道に、誰もいねえ。
車が止まっているのは見たが路上駐車だ。中に人はいなかった。
そういえば鳥の声もしない。
いつもチュンチュンうるせえ、雀どもの声もしない。
どっかのおばはんがエサをやってるらしい、野良猫の声もしねえ。
ないないづくしだ。
「―――――??? どーなってんだ……」
流石に気味が悪くなってきた。
その時だった。
「おにいさん、起きられたの?」
背後から幼い声に声をかけられて振り向く。
と、そこには。
……青色のランドセルを背負った、小学校低学年くらいの少女がいた。
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